『雪月光』数珠
数珠をつくるのにはすごくエネルギーが要ります。 でもある日、ふっと頭に美しい数珠の映像が浮かび、「よし、つくろう」と思います。でも取りかかるのには覚悟と時間が掛かります。ようやく覚悟できたらイメージの色のガラス作り、模様を付けるのに必要な材料作りを始めます。整ったら更なる覚悟ができるのを待ちます。そして心が決まったら玉を作り始めます。ひとつ目の玉が出来た時に、イメージの色が再現できていたら二つ目、三つ目と数日に渡り27個作ります。27個というのは人の煩悩の数108を4で割った数なのだと、私に数珠をつくるきっかけを下さった僧侶さんが教えて下さいました。
イメージの色と違ったらまた色作りからやり直します。玉が27個出来たら何となくホッとします。次に組紐の色を考えます。すぐに決まる時と、なかなか決まらない時がありますが、最終的には当初のイメージを思いだして決めます。合わせる組紐の色で雰囲気が大きく変わります。玉を通し、組み始めます。しっかり組むためには結構な力が要ります。手のひらがヒリヒリ、豆ができたりもしますが、完成間近なので嬉しい気持ちになってきます。でも最後の最後に組紐の長さを揃え、先端に房を作るのにも微調整が必要なのでまだまだ気は抜けません。 『雪月光』は、この冬初めて雪が積もった日の夜に、窓の外がいつもより明るくて美しかったのが心に残り、生まれました。珍しく制作を始めるのに時間が掛かりませんでした。写真では分かりにくいのですが銀箔を沢山使いました。銀箔は火の当て具合で金色にもなります。輝く雪のイメージは銀色ですが、照らす月のイメージは金色に近いので、銀色と金色のバランスを考えて作りました。
私は寒いのが苦手ですが、雪が降る日に生まれたと聞いている為か、雪は好きです。出掛けるときは大変大変辛いですが…。
この数珠を作ろうと思わせてくれた雪が、まだ庭に積もっています。この雪が溶けるまでにこの数珠を完成させられた事を嬉しく思います。